父方のおじいちゃんが亡くなって遺品の整理もひととおり済んだ後、半年くらい経ったときのことです。田舎のおばあちゃんから突然電話がかかってきて、納戸から古い金庫が見つかったのだけど開け方がさっぱりわからない、どうせロクなものは入っていないのだろうけれど、おじいちゃんの大事なものが入っていると困るから開けに来てほしいというのです。
お父さんは、鍵屋さんに電話して開けてもらえば良いと言っていたのですが、お母さんは中身が気になってたまらないらしく、「高価なものが出てきたらどうするのよ、お義母さん、分からなくて捨てたりしちゃうかもしれないわよ」と言って、とうとうお父さんがお休みの日に、みんなでおばあちゃんの家に遊びに行くことになりました。
家に着いてみてまず驚いたのは、金庫はダイヤル式でかなり大きく、重くて頑丈だったことです。おばあちゃんは、生前おじいちゃんが友人の方から貰い受けたものだと言っていましたが、これは素人ではどうすることも出来ないと、子供のわたしにもわかりました。
ところがお母さんはまず自分で金庫のレバーをガチャガチャと動かし、おばあちゃんには「開け方の書いたメモ」が残っていないかとしつこく聞きはじめ、最後にはお父さんになんとか開けるように言いだしました。お父さんが鍵屋を呼ぼうといっても、中身が分からないのにお金かけて鍵屋を呼ぶのはバカバカしいという、分かったような分からないような理屈を言うお母さんに根負けして、ついにお父さんが金庫のダイヤルの前に座り込みました。
結局、ダイヤルが少しずれていただけで鍵はかかっておらず、そっと回すと自然にカチリと音がして、金庫が開きました。そしてその中身は、
箱ティッシュ
お漬物の真空パック(たぶん腐っている)
軍手
でした。
なんでこんなものを金庫にしまっていたのかは最後まで謎でしたが、落胆するお母さんとよそに、お父さんはおなかを抱えて大笑いしていました。